近年、クラウドサービスと呼ばれる、インターネットを利用して各種サービスを利用者に提供する形態が注目を集めております。注目が集まっていくなか、利用者も年々増加しており、そのことは総務省が発表する「国内におけるクラウドサービスの利用状況」においても読み取れます。
平成26年情報通信白書の第4節 クラウドサービスの利用動向参照
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc254110.html
上記の資料に基づけば、一部でもクラウドサービスを利用していると回答した企業の割合は、平成24年末の28.2%から、平成25年度は33.1%に上昇しております。およそ企業の三社に一社は一部でもクラウドサービスを利用しているという状況になってきております。こうしたクラウドサービスを利用するにあたっては、その利用に関する決め毎やサービス提供者と利用者それぞれの責任と義務、そして利用者の権利、といったことに関して利用規約や利用契約書等でサービス提供者と利用者双方で合意しておくことが必要です。このページは、そうした利用規約や利用契約書のポイント等についてのページとなります。
【契約当事者】
クラウドサービスを提供する事業者(甲)と、当該サービスを利用する利用者(乙)との間で契約を締結します。
クラウドサービス利用規約(契約書)の内容(ポイント等)を以下に記載します。尚、不特定多数の利用者が想定されるクラウドサービスについては、一般的には利用規約形式にして、そのクラウドサービスに関するウェブサイト等に掲示します。それとは別に、ある特定の利用者向けのクラウドサービスという場合は、利用契約書形式にして、利用者とサービス提供者双方が書面に捺印をして合意するという形もあります。このページでは、最もケースとして多い利用規約形式を前提として進めます。
【趣旨】
- 利用者がクラウドサービスを利用する上で利用者及びサービス提供者の双方が負う責任と義務、そして利用者がどのようにサービスを利用することができるのかといった条件等を定めます。
- クラウドサービスと一口に言っても、具体的に提供されるサービスは様々なものが想定されます。例えばクラウド型のソフトウェア利用サービスといったものや、オンラインストレージサービス、クラウドサーバ提供サービス等、様々なサービスが考えられますので、利用規約の冒頭の方で、サービスの名称を明らかにした上で、具体的に提供するサービスを定義しておいた方が望ましいです。
【サービス利用に関する事項】
- 利用者がクラウドサービスを利用するために行うべき申込み手続きについて定めます。別紙申込書の提出が必要であれば、その旨を規約に記載します。
- 申込み手続きが完了した利用者が、クラウドサービスの利用を開始できるようになる時期について定めます(ログインIDとパスワード発行後利用開始可能等)。
- 利用者のクラウドサービス利用期間(利用契約期間)と、その更新について定めます。尚、最低利用期間(利用期間の最小単位)を設定する場合は、必ず利用規約においてそのことを定めます。その場合、もし最低利用期間以内にクラウドサービスの利用を終了する場合の条件等も定めます。
- クラウドサービスの利用範囲や利用条件、禁止事項といったものを定めます。また、利用者が支払うべき利用料金についても定めます(具体的な金額や支払日は別紙申込書に定める形が多い)。
【サービス提供に関する事項】
- 利用者にどのようなサービスを提供するかを定めます。
- クラウドサービスを利用する利用者に対するサポート内容及びサポート受付方法等を定めます。
- 利用者がクラウドサービスを利用する事でサーバに保存されるデータの取り扱いやバックアップについて定めます。尚、これらのデータの取り扱いやバックアップは、SLA(サービスレベルアグリーメント)において定めることもあります。
- サービス提供者の責任範囲、免責事項、損害賠償を負う場合とその金額といったことを定めます。
- 必要に応じてSLA(サービスレベルアグリーメント)を定めます。尚、SLAは必ず定めなければならないというものではなく、実際SLAを定めていないクラウドサービスの方が多く見受けられるように思います。
【重要なポイントのまとめ】
1.利用規約形式とする場合、個別具体的な利用内容(利用プラン、利用料金の金額、オプションの有無等)は別紙申込書等に定めるという形態をとることが多いです。他方、利用契約書という甲乙双方が捺印をする形式ですと、利用契約書内で個別具体的な利用内容(利用プラン、利用料金の金額、オプションの有無等)を定めます。
2.ウェブサービスの利用規約や、ASPサービス利用規約、SaaS利用規約等と概ね共通する点は多いですので、クラウドサービス利用規約を作成するにあたっては十分参考になると思います。
3.利用規約において重要なポイントは、禁止事項、免責事項、万一場合の損害賠償条項、ユーザー情報等の取扱い、利用期間と途中でやめたい場合の取扱い、利用料金の支払いといったところになろうかと存じますので、これらをきちんと契約書に定める必要があります。
4.ユーザー情報等の取扱いは、個人情報の取扱いと連動する事項であるため、別途プライバシーポリシーを定める場合はプライバシーポリシーと整合する内容にし、プライバシーポリシーがない場合は、利用規約内でプライバシーポリシーに準じる条項を定めることが望ましいです。
上記が、クラウドサービス利用規約(契約書)に関するポイントとなります。
【クラウドサービス利用規約(契約書)の当事務所対応実績例の一部】
- オンラインストレージサービス利用規約
- クラウド型の気象情報配信サービス利用規約
- クラウド型会計ソフトウェア利用規約
- クラウド型のヘルスケアシステム利用契約書
- クラウド型の電子印鑑ソフトウェア利用契約書
- クラウド型の請求書管理システム利用規約
- クラウド型の介護施設用システム利用規約
- クラウドサーバ利用規約
- クラウド型の調剤過誤防止システムの利用規約、申込書、ハードウェア規約
- クラウド型の電柱位置表示システムの利用規約及び申込書
- クラウド型の大学入試に関するシステム(志願者情報管理及びインターネット出願)の利用規約及び申込書
- ウェブアプリケーションの開発及び運営等をオンライン上で行うためのクラウド型のIDE(総合開発環境)利用規約
- レセコンと連動するクラウド型の接骨院、治療院、クリニック向けの業務支援システムの利用規約
- 販売管理システムのクラウド版の利用規約及び申込書
- 業務管理、自動化、タスク管理及びシステム統合等の機能を有するクラウドツールの利用規約及び申込書
- 金属製品等の受発注システムの利用契約書
- クラウド型業務支援サービスの利用規約
・・・etc
オンラインストレージサービスを例とします。
本規約は、株式会社○○○○(以下「当社」といいます)が提供するオンラインストレージサービス「○○○○」及びこれに付随するサービス(これらを総称して以下「本サービス」といいます)の利用に関する諸規定を定めるものとなります。本サービスを利用する全ての契約者は、本規約を遵守して頂く必要があります。 第1条(定義) 本規約において使用される次の用語の意味は、それぞれ当該各号に定めるとおりとします。 ①「契約者」 本サービスを利用するために利用申込みを行い、当社との間で利用契約が成立した法人、団体及び個人等をいいます。 ②「利用契約」 本サービスの利用を目的として、契約者と当社との間で締結する契約をいいます。 ③「本サービスサーバ」 契約者が本サービスを利用することでその利用データ等が保存及び蓄積される本サービス用のクラウド上のサーバをいいます。 ④「登録データ」 契約者が本サービスを利用することで本サービスサーバに送信、保存及び登録等された全てのデータをいいます。 ⑤「本サービスサイト」 本サービスの機能、仕様及び利用料金等を掲載しているウェブサイトをいいます。 第2条(本規約の適用等) 1) 本規約は、全ての契約者に適用されるものとします。尚、利用契約が成立する前の申込み段階の事業者に対しては、第5条(申込み)及びその他申込みに関連する規定が適用されます。 2) 当社が本サービスに関する個別規定(個別の規約及び本サービス利用画面に掲載する利用上の諸注意等)を別途定める場合は、当該個別規定も本規約の一部を構成するものとし、契約者は当該個別規定も併せて遵守するものとします。尚、本規約と個別規定の内容が相反し、又は矛盾する場合は、個別規定を優先するものとします。 第3条(サービスの定義) 1)本サービスは、契約者によるデータの保存、蓄積及び共有等を目的とするオンラインストレージサービス「○○○○」並びにこれに付随するサービスとし、各サービスの仕様、機能及び利用料金等は、本サービスサイトに定めるとおりとします。 2) 以下、続く・・・・ |
【収入印紙】
利用規約については、ウェブサイトに掲載する形式のものですので特に収入印紙を貼るというものではございません。
尚、利用契約書形式の場合でも、クラウドサービスの利用に関する合意文書は、一般的には無体財産権の利用許諾とみなされるケースが多く、いわゆる不課税文書扱いになります。よって、一般的には収入印紙を貼る必要はありません。但し、カスタマイズ等の請負要素がある場合は話しが別になります。この場合は、個別事案になりますので、実際に税務署等に契約書を確認してもらって収入印紙の貼付が必要か否かを確認した方がよいでしょう。
【クラウドサービス利用規約(契約書)の作成代行】
料金 | 納期目安 | 成果物 | |
契約書の作成 | 50,000円(税別) | 3営業日 | 契約書データ |
※納品させて頂く契約書データはお客様が編集可能なWordファイルとなります
【クラウドサービス利用規約(契約書)の修正・チェック】
料金 | 納期目安 | 成果物 | |
契約書等チェック 修正対応 |
1ページにつきおよそ5,000円(税別) | 2営業日程度 |
リーガルチェック対応後の契約書データ |
※納品させて頂く契約書データはお客様が編集可能なWordファイルとなります
<補足>
クラウドサービス利用規約(契約書)の事案や難易度により料金が増減したり納期にお時間を頂く場合がございます。そのため、ご依頼頂く前に、お客様からヒヤリング等を行った上で御見積書を提示致します。
クラウドサービス利用規約(契約書)ご依頼の流れ(遷移先ページ下部)
サービス名等の商標登録もお考えの場合はこちら
クラウドサービス利用規約(契約書)について、ご相談等がございましたら、お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。
藤枝知財法務事務所
代表:藤枝秀幸(弁理士・行政書士)
2009年に当事務所を設立し、長年SEとしてシステム開発等に携わった経験及び知識等を活かして主にIT系やコンテンツ系のクライアント様、クリエイター様等から多数の契約書、利用規約等の作成やリーガルチェック業務のご依頼を頂いております。
また、補助金を活用した特許・商標・意匠登録対応も得意としており、契約×知財×補助金の広い視点でお客様をサポートさせて頂いております(2024年時点で事務所設立15年)。
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・日本経済新聞 電子版
2011年5月30日、2011年5月31日
「開発費不要をうたうIT企業の思惑」「新事業モデル支える二つの契約形態」取材協力等
・日経コンピュータ2011年4月28日号
レベニューシェア契約に関する取材協力等
・2024年9月27日 All About『無料・フリー画像の落とし穴!?自治体や学校でイラストの無断使用による損害賠償が増えている理由』執筆
他、週刊ポスト、FRIDAY、クローズアップ現代(NHK)等様々な媒体で契約書や知的財産権に関して取材協力をさせて頂いております(詳細はこちら)。