レベニューシェア契約
契約当事者同士で、ある目的物(ECサイトや著作物、携帯・スマートフォンアプリ等)を制作開発し、そこから発生する収益を分配することを目的とする契約をレベニューシェア契約といいます。
近年、この契約形式によるウェブサイト制作やECサイトの運営代行、携帯・スマートフォンアプリ制作といったビジネスが行われるようになってきました。
【契約当事者】
利益をレベニューシェアする当事者同士
(3者間、4者間等の契約となる場合もあり)
【取材協力】
日経コンピュータ 2011年4月28日号において、「開発費不要の受託開発」に関する特集の中でレベニューシェア契約が取り上げられました。
その特集において、レベニューシェアによる受託開発の実態や契約締結におけるポイント・注意点等に関して取材協力をさせて頂きました。
レベニューシェア契約の趣旨・ポイント・注意点等は以下のとおりです。
【趣旨及び特徴】
- ウェブサイト制作が契約の目的に含まれる場合、その制作費用が無料になる場合が多い。レベニューシェア契約ではそのサイトから発生する収益で制作費用を回収するため、このような方法が可能。
- 上記のように初期費用が原則として発生しないことが特徴。また、収益を発生させないと制作側が大きなリスクを負ってしまうため、単なる発注者・受注者という関係である場合以上の成果を生み出しやすい。
【当事者の役割】
- 契約当事者双方の役割を明確にすること。レベニューシェア契約では、単なる発注者・受注者というよりも、パートナーという性質が強いため、お互いが協力し合っていかなければならない。
【初期費用】
- 原則として、初期費用は発生しないが、ドメイン取得費・サーバー費用・携帯キャリアへの申請費用等の実費等をどのように当事者同士で負担するかを明確にする必要がある。
- レベニューシェア契約により制作物を制作する側に対して、多少初期費用を支払うという場合も実際には存在する。この場合、制作側のレベニューシェア率を多少下げる等の調整が取られやすい。
【違約金】
- 制作側にとってみれば制作費用を回収しなければならないので、レベニューシェア契約が短期(6カ月以内等)で終了した場合の違約金等を定める場合がある。
【著作権等】
- 制作物の著作権等、権利の帰属を明確にする。場合によっては、ある売上高を突破するまでは、著作権等の権利を共有するという方法もある。
【契約終了後】
- 契約終了後の制作物の取り扱いを定める必要がある。制作側の制作費用が回収できている場合は無償で制作物を契約相手に譲渡し、回収できていない場合は有償で譲渡する(買い取り)という方法が行われている場合もある。
【重要なポイントのまとめ】
1.まず前提として、レベニューシェア対象の業務や目的物をきちんと契約書で明確にする必要があります。ECサイトの制作を目的として、そのECサイトから生じた売上を分配するものなのか、それともスマートフォンアプリを開発してその配信売上・広告収入等を分配するものなのか、といったことをきちんと契約書で明記する必要があります。
2.そして、レベニューシェアで最も重要なのはやはり売上分配ですが、前提として、分配対象の売上がなんなのか、また経費を差し引いて利益で分配するのならば差し引く経費はなんなのか。そのうえで、それぞれの分配率のパーセンテージと支払日等を契約書にきちんと明確にする必要があります。
3.また、レベニューシェア契約の場合、目的のプロダクトの著作権等の権利をどうするのかという問題があります。初期費用なしのレベニューシェアという場合等は、通常の業務委託とは異なる権利の取り扱いをすることも良く見受けられます。受託する側としては、開発にかかった分を回収したいので、回収できるまでは著作権等の権利を受託側に残すといったやり方もありますし、また双方で著作権を共有するという場合もあります。双方の立場やレベニューシェアに至った経緯・目的といった事情でこのあたりは決定されてくるところですので、個別に検討が必要になります。
4.レベニューシェア契約は当事者が三者、四者といった複数になることもありますので、そういう場合はそれぞれの役割と責任をできるだけ明確にする必要があります。
レベニューシェア契約の概ねの趣旨・ポイント等は、一般的に上記のような形となります。
なお、収益分配の形式は様々ですが、「その目的物から発生する月間売上 × 20%」といった、売上に応じた収益分配とするケースが多いようです。
※Webサイト制作を目的とするレベニューシェア契約書例
収 入 印 紙 (4,000円) 株式会社○○○○(以下「甲」という)と株式会社△△△(以下「乙」という)は、別紙目録記載のWebサイト(以下「本サイト」という)の制作開発業務を甲が乙に委託することに関し、次のとおり契約を締結する(以下「本契約」という) 第1条(契約の目的) 1)甲は、本サイトの制作開発業務として第3条記載の業務(以下「本業務」という)を乙に委託し、乙はこれを受託する。 2)甲及び乙は、本サイトから生じる収益を、第11条(対価)に定めるレベニューシェア比率に基づき双方で分け合うものとする。 3)甲は、乙が本業務を遂行するに際して、必要な協力を行う。 第2条(再委託の禁止) 1)乙は、事前に文書による甲の承諾を得なければ、本業務の全部又は一部を第三者に再委託することができないものとする。 2)乙は、前項に基づき、甲の承諾を得て本業務の全部又は一部を第三者に再委託する場合、当該第三者に対しても本契約内容を遵守させるものとする。 3)甲の監査部門は、乙が本条第1項に基づき第三者に業務を委託する場合には、その妥当性を確認するため、調査することができる 第3条(委託業務) 1)甲が乙に委託する業務は下記のとおりとする。 ①本サイト制作開発業務(デザイン業務、プログラミング業務等) ②本サイト保守業務 ③本サイト更新業務 ④本サイトにて取り扱う商品の写真撮影業務 2)前項各号に定める本業務の具体的な内容は第6条(本サイト制作開発業務)、第7条(本サイト保守業務)、第8条(本サイト更新業務)にて定める。 3)本サイトの制作開発及び運営に関する最終決定権は原則として甲にあるものとするが、甲はこの権利を濫用してはならず、甲乙協議の上で双方合意した内容を十分に尊重するものとする。 4) 以下、続く・・・・ |
【収入印紙】
レベニューシェア契約書は業務委託契約にあたるケースが多く、また契約期間が長期になることが多いため、収入印紙の必要な「継続的取引の基本となる契約書(印紙税法上の7号文書)」に該当する場合が多いです。
Webサイト制作が伴う場合でも、レベニューシェア方式等により制作金額が明確に算出できない場合は、上記のとおり7号文書です。
7号文書は、印紙税額が一律で4,000円となっております。
尚、収入印紙を貼っていなくても契約の成立には何ら影響を与えませんが、税務調査等によりそのことが知られた場合には、印紙税法違反となり、本来払うべき印紙税額の3倍を支払うことになります。
【レベニューシェア契約書対応実績例】
※サイト代行例(家電量販店サイト)
※開発システム例(治療院予約システム、商工会議所の事業者向けシステム)
- LINEスタンプ制作
- イラスト制作
- サイトやアプリ等の保守
- 対象ビジネスをレベニューシェアで共同実施、運営及び展開等すること※対象ビジネス例(海外在住者向けの訪日ツアーサービス、ガールズファッションショーのファッションアウトレット)
- 対象商品及びサービスに関するウェブサイトの制作を含む各種販促物の制作並びに集客施策及び広告宣伝の企画、計画及び実施※対象商品例(健康食品、健康飲料、医療行為の実施サービス、ファッションアウトレット専門ECサイト)
- クリエイターとのコラボレーションによる製品開発及び販売
※製品例(箸及び箸置き)
- コンテンツの使用等の許諾に基づくレベニューシェア
※コンテンツ例(カードゲームのアプリ化)
- 企業宣伝カーの制作及び関連グッズの共同制作に伴うレベニューシェア(関連グッズの売り上げをレベニューシェア)
- 自社のフレームワークやミドルウェアを使用して構築したECサイトに関するレベニューシェア(フレームワークやミドルウェアの使用料として売り上げをレベニューシェア)
etc・・・・
【レベニューシェア契約書の作成代行】
料金 | 納期目安 | 成果物 | |
契約書の作成 | 50,000円(税別) | 3営業日 | 契約書データ |
※納品させて頂く契約書データはお客様が編集可能なWordファイルとなります
【レベニューシェア契約書のチェック】
料金 | 納期目安 | 成果物 | |
契約書等チェック 修正対応 |
1ページにつきおよそ5,000円(税別) | 2営業日程度 |
リーガルチェック対応後の契約書データ |
※納品させて頂く契約書データはお客様が編集可能なWordファイルとなります
【レベニューシェア契約書の雛形提供】
料金 | 納期目安 | |
契約書等雛型提供 | 8,000円(税別). | 翌営業日 |
※雛形提供をご希望の方は、お問い合わせフォームを通じて、お問い合わせ内容にご希望の契約書雛形名をご記載の上で当事務所までご連絡願います。
※カスタマイズをご要望される場合は、作業分量に応じて別途費用が掛かります。
※お客様より特にご指定がない場合はWordファイルで提供致します。
(PDF、テキスト、書面等による提供はご要望に応じて対応致します)
レベニューシェア契約書雛形のリスト及び内容
<補足>
レベニューシェア契約の事案や難易度により料金が増減したり納期にお時間を頂く場合がございます。そのため、ご依頼頂く前に、お客様からヒヤリング等を行った上で御見積書をご提示致します。
レベニューシェア契約書ご依頼の流れ(遷移先ページ下部)
商品・サービス名等の商標登録もお考えの場合はこちら
レベニューシェア契約について、ご相談等がございましたら、お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。
藤枝知財法務事務所
代表:藤枝秀幸(弁理士・行政書士)
2009年に当事務所を設立し、長年SEとしてシステム開発等に携わった経験及び知識等を活かして主にIT系やコンテンツ系のクライアント様、クリエイター様等から多数の契約書、利用規約等の作成やリーガルチェック業務のご依頼を頂いております。
また、補助金を活用した特許・商標・意匠登録対応も得意としており、契約×知財×補助金の広い視点でお客様をサポートさせて頂いております(2024年時点で事務所設立15年)。
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【メディア掲載実績】
・日本経済新聞 電子版
2011年5月30日、2011年5月31日
「開発費不要をうたうIT企業の思惑」「新事業モデル支える二つの契約形態」取材協力等
・日経コンピュータ2011年4月28日号
レベニューシェア契約に関する取材協力等
・2024年9月27日 All About『無料・フリー画像の落とし穴!?自治体や学校でイラストの無断使用による損害賠償が増えている理由』執筆
他、週刊ポスト、FRIDAY、クローズアップ現代(NHK)等様々な媒体で契約書や知的財産権に関して取材協力をさせて頂いております(詳細はこちら)。