【裁判】チャップリン映画のDVD販売は著作権侵害
<2009年10月10日>
最高裁判所 平成 20年 (受) 889号 著作権侵害差止請求事件
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091008110546.pdf
【事件内容】
チャップリンの映画の著作権を管理している外国団体が、チャップリンの映画を無断でDVD化し、販売している日本のDVD制作会社に対して、販売の差し止め・損害賠償などを求めている裁判の上告審
【裁判の当事者関係】
原告
→チャップリン映画の著作権管理団体(外国法人)
被告(上告人)
→チャップリン映画のDVDを販売している日本のDVD制作会社
【争点】
- 1.チャップリン映画の著作者は誰になるのか
- 旧著作権法の下では、チャップリン自身若しくは映画制作会社のどちらが著作者となるのかどうかについて
- 2.チャップリン映画の著作権保護期間について
- 旧著作権法の下では、チャップリン映画の著作権保護期間はいつまで存続するのかについて
【判決】
1.チャップリン映画の著作者は誰になるのか
被告であるDVD制作会社は、チャップリン映画の著作者は映画製作会社であり、よって映画の公開から33年を経過(※1)しているので既にチャップリンの映画の著作権は消滅していると主張しました。
それに対し、裁判所は以下のように判示しました。
「旧法の下における映画の著作物の著作者については,その全体的形
成に創作的に寄与した者がだれであるかを基準として判断すべきであって ~(中略)~ 本件各映画については,チャップリンがその全体的形成に創作的に寄与したというのであり,チャップリン以外にこれに関与した者の存在はうかがわれないから,チャップリンがその著作者であることは明らかである。」
上記のとおり、チャップリンの映画についてはチャップリン自身が原作・脚本・制作・監督・演出・主演などを単独で行っているので、チャップリンがその著作者となることは明白であるとしております。
※1:旧著作権法では、著作者が団体の映画については、公開後33年で著作権が消滅すると規定されていた。
2.チャップリン映画の著作権保護期間について
上述のとおり、被告であるDVD制作会社は、チャップリンの映画の著作権保護期間は、公開から33年であると主張しました。
それに対し裁判所は、「本件各映画には,それぞれチャップリンの原作に基づき同人が監督等をしたことが表示されているというのであるから,本件各映画は,自然人であるチャップリンが著作者である旨が実名をもって表示されて公表されたもの」
であるとして、チャップリン映画の著作権の保護期間は、チャップリンの死後38年までであると判断しました。
よって、チャップリンは1977年に死亡しているので、チャップリン映画の著作権は、旧著作権法が適用される作品については原則、2015年まで保護されるということになります。
【結論】
上告を棄却する
よって、DVD制作会社に対するDVDの販売差し止めと1050万円の損害賠償を命じた1審・2審の判決が確定した。
【個人的見解】
今回は、現行著作権法の施行日前に公開されていた映画の著作権を巡った争いでしたので、裁判所は旧著作権法に基づき判断をしております。
今回の裁判では、著作者が実名で表示された場合には、仮に映画制作会社の著作名義表示があったとしても、著作権の保護期間は著作者の死後38年であると判示された点において、画期的な面があります。
昔の外国映画の廉価版DVDって他にも結構あったと思いますので、今回の裁判は、そういった事例に対して大きな意味をもつ判例の一つになるかと思います。
藤枝知財法務事務所
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