【裁判】オークションカタログへの出品物無断掲載は違法
<2010年2月13 日>
東京地裁 平成20年(ワ)第31480号 損害賠償請求事件
【事件内容】
香港で開催されたオークションにて、そのオークション会社が発行するフリーペーパーの綴じ込みカタログやオークション用パンフレットに出品美術作品の画像を掲載することについて、著作権者の複製権の侵害にあたるかどうかについて争われた裁判
原告:オークションに美術品を出品した芸術家4名
被告:オークション主催会社
【原告請求内容】
被告が原告らの著作権を侵害したことによる損害賠償
【争点】
- 1.冊子カタログ等への掲載は引用に該当するのか
- 2.被告の行為が、「展示に伴う小冊子への複製」といえるかどうか
- 3.著作権者の権利濫用と言えるかどうか
【判決】
争点についての判決を下す前に、本件オークションが香港で開催されていることから、被告は香港法に準拠すべきであると主張したが、複製権の侵害が問題とされているパンフレット等が日本国内で配布されており、被告会社の本店が日本国内にあることから、日本法に準拠する旨が判示された。
1.冊子カタログ等への掲載は引用に該当するのか
被告は、フリーペーパー綴じ込みカタログやパンフレットに出品美術品の画像を掲載することは、著作権法32条1項に定める「引用」に該当すると主張。
しかし、カタログ・パンフレット等の主たる部分が作品の画像であり、作者紹介部分等の文字記載部分が単に作者の略歴を記載した程度のものであることから、引用とは認められないと判示されました。
よって、争点1については被告の主張が斥けられた形となります。
2.展示に伴う小冊子への複製として適法かどうか
被告は、フリーペーパー綴じ込みカタログ及びパンフレットはオークションの観覧者向けに出品美術品を紹介するために作成したものであり、これは著作権法47条の「小冊子」に該当するから、これに出品美術品を掲載することは適法であると主張。
これに対し裁判所は、確かに著作権法47条に定める「小冊子」のように、観覧者のために著作物の解説・紹介を目的とするものならば適法であるが、観覧者であるか否かを問わず多数人に配布するものは「小冊子」にあたらないとした。
続けて、本件フリーペーパーは美術館やコンサートホールなど様々な場所に置かれており、パンフレットもオークションへの参加有無にかかわらず被告会社の会員全員に配布されていたものなので、いずれも著作権法47条にいう「小冊子」には当たらないとした。
よって、こちらも被告の主張が斥けられた形となります。
3.著作権者の権利濫用と言えるかどうか
被告は、原告による著作権の行使は権利濫用に当たると主張。
これに対し裁判所は以下のように判示して、被告の主張を斥けました。
「被告は原告らに無断で著作物の画像掲載を行ったものであることからすると、本件において、原告らの著作権の行使を権利の濫用であるとするような事情も認められない。」
【結論】
原告の請求を認める。
よって、裁判所は被告に対し、原告に損害賠償をするよう命じた。
【個人的見解】
オークションの出品物をオークションパンフレットやカタログに掲載することは、何の問題もないのではと思う人もいるかと思います。
実際、裁判の中で、被告であるオークション主催会社は、オークションカタログに出品物画像を掲載することは国際慣習である旨を主張しておりました。
しかし、本件はオークションに参加しない人たちにまで出品物画像が掲載されたカタログやパンフレットが配布されておりましたので、この場合は、やはり著作権の侵害となるでしょう。
藤枝知財法務事務所
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2011年5月30日、2011年5月31日
「開発費不要をうたうIT企業の思惑」「新事業モデル支える二つの契約形態」取材協力等
・日経コンピュータ2011年4月28日号
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・2025年1月15日 All About『箱根駅伝に"異変"!?NIKEとadidasの「シューズ特許戦線」』執筆(Yahooニュースにも掲載)
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