
【裁判】FX取引ソフト無断改変による著作権侵害事件
<2010年6月29 日>

大阪地裁 平成19年(ワ)第16747号
知財高裁 平成21年(ネ)第10070号
【事件内容】
原告が開発したFX取引用プログラムを被告が無断でそれを改変した
プログラムを作成したことで原告の著作権を侵害したとして争われた事件
原告:FX取引プログラム開発業者
被告:原告と同じ会社の役員であった者及び同社と契約関係にあったプログラマ等計3名
【原告請求内容】
原告が開発したFX取引用プログラムを被告が無断で改変して被告プログラムを作成したことによる著作権侵害
被告が作成した被告プログラムを、著作権侵害により作成されたプログラムであると知って頒布・頒布目的で所持していたとすることによる著作権侵害
これらの著作権侵害に対する損害賠償請求として、被告らに連帯して2500万円を原告に支払え
【争点】
- 1.被告は、原告が開発したFX取引用プログラムを無断改変して被告プログラムを作成したのか
- 2.被告は、作成した被告プログラムを第三者に頒布したのか
【判決】
裁判所は、事案を考慮して、まずは被告プログラムが頒布されたのかどうかから判断することとした。
1.被告は、作成した被告プログラムを第三者に頒布したのか
被告らが作成した被告プログラムを第三者に頒布したことを直接示す証拠はなく、頒布目的で所持していたと認めることもできない。
よって、原告の主張は斥けられた形となります。
2.被告は、原告が開発したFX取引用プログラムを無断改変して被告プログラムを作成したのか
被告プログラムは、原告が開発したFX取引用プログラムに依拠して作成されたものであり、原告が開発したプログラムを複製又は翻案したものと認められる。
しかし、被告プログラムが販売されたことを窺わせる証拠は全くなく、被告プログラムはより多くの利益を獲得できるプログラムを作成するため、各トレードごとの成績を個別に検証し、適切なパラメーター設定を探ることのみを目的として作成されたものであって、販売用のものではないことが
認められる。
よって、被告が被告プログラムを作成するにあたって原告が開発したプログラムを複製又は翻案したことがあったとしても、これをもって原告が著作権侵害を主張し、損害賠償を請求することは権利の濫用にあたり許されないものというべきである。
よって、こちらも原告の主張が斥けられた形となります。
【結論】
原告の請求はいずれも理由がないので、これを棄却することとする。
【個人的見解】
被告が被告プログラムを作成する上で原告開発プログラムをリバースエンジニアリングするような複製・翻案が行われていたことが認められているにもかかわらず第三者への頒布(販売)がなかったため、著作権侵害による原告の損害賠償請求は権利の濫用にあたるとされました。
ある意味非常に意義のある判決であり、今後、リバースエンジニアリングが問題となったとき、リバースエンジニアリングにより作成されたプログラムが第三者に頒布(販売)されたのかどうかという点が非常に重要な要素になるということが考えられる裁判となりました。
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「開発費不要をうたうIT企業の思惑」「新事業モデル支える二つの契約形態」取材協力等
・日経コンピュータ2011年4月28日号
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・2025年1月15日 All About『箱根駅伝に"異変"!?NIKEとadidasの「シューズ特許戦線」』執筆(Yahooニュースにも掲載)
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