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【裁判】KDDIへの発信者情報開示請求事件

著作権判例

【裁判】KDDIへの発信者情報開示請求事件


<2010年7月4 日>
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最高裁(三小) 平成21年(受)第609号



原告:学校法人A学園の学園長
   (掲示板への書き込みにより権利を侵害されたと主張)
被告:KDDI
   (原告を侮辱するような書き込みを行った者が契約している
   DIONという名称でサービスを提供しているプロバイダ)
【事件内容】


インターネット掲示板「2ちゃんねる」において原告学園長を侮辱するような書き込みがなされ、原告学園長が、当該書き込み者を特定するために当該書き込み者が契約しているプロバイダKDDIに対して、当該書き込み者情報の開示請求を行ったが、KDDIがこれに応じなかったためKDDIに重大な過失があるとして原告学園長が損害賠償請求を求めた事件




【経緯】

1.平成18年9月~
 2ちゃんねるに原告学園長に関するスレッド「A学園Part2」が立てられ、様々な書き込みがなされた。
2.平成19年1月16日
 このスレッドにおいて、「なにこのまともなスレ気違いはどうみてもA学園長」との書き込みがなされる。
 (この書き込みに際して、該当の書き込み者はKDDI提供サービス経由で書き込みを行っている)
3.平成19年2月27日
 原告学園長よりKDDIに対して、該当の書き込み者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスの開示を請求。
4.平成19年6月6日
 KDDIより原告学園長に対して、「本件書き込みによって学園長の権利が侵害されたことが明らかであるとは認められないため、本件発信者情報の開示には応じられない」旨回答
5.原告学園長が損害賠償等を求めてKDDIを提訴




【主な争点】

  • 1.・問題の書き込み内容は原告学園長の権利を明らかに侵害するものであったのかどうか






【判決】


1.問題の書き込み内容は原告学園長の権利を明らかに侵害するものであったのかどうか



「開示関係役務提供者が開示請求に応じないことによりその開示請求をした者に生じた損害については、故意又は重過失がある場合でなければ賠償の責任を負わない」との見解を示した上で
「本件書き込みは~(中略)~「気違い」といった侮辱的な表現を含むとはいえ、原告学園長の人格的価値に関し、具体的事実を摘示してその社会的評価を低下させるものではなく、原告学園長の名誉感情を侵害するにとどまる
と判断し、原告学園長の権利を明らかに侵害する内容ではなかったと示す。続いて
「本件書き込みの文言それ自体から、これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず本件スレッドの他の書き込みの内容、本件書き込みがされた経緯等を考慮しなければ、原告学園長の権利侵害の明白性の有無を判断することはできないものというべきである。そのような判断は、裁判外において本件発信者情報の開示請求を受けたKDDIにとって、必ずしも容易なものではないといわなければならない。
 よって、開示請求に応じなかったことについては、KDDIに重大な過失があったということはできないというべきである。」
と判示しました。




【結論】


KDDIに重大な過失があったとは認められないため、原告学園長が求めている損害賠償請求は棄却する。








【個人的見解】



確かに、スレッドの内容全てをプロバイダが確認したうえで、書き込み内容が明白に権利侵害に該当するかどうかを判断することをプロバイダに求めるのは責任が重過ぎますので、妥当な判断だと思います。
今回の判決をみる限り、書き込み内容が相当悪質でない限り、プロバイダに損害賠償を請求するのは非常に難しいと考えられます。
ここ最近、2chへの書き込みに関する裁判が多いですが、本件は最高裁の判決ということもあり、リーディングケースのひとつになるのではと考えます。








藤枝秀幸

藤枝知財法務事務所
代表:藤枝秀幸(弁理士・行政書士)
 
2009年に当事務所を設立し、著作権等の知的財産権の専門家として、主にIT系、エンタメ・芸能・コンテンツ系のクライアント様やクリエイター様等から多数の契約書業務や著作権相談のご依頼を頂いております。
また、補助金を活用した特許・商標・意匠登録対応も得意としており、契約×知財×補助金の広い視点でお客様をサポートさせて頂いております(2024年時点で事務所設立15年)。
 

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