【裁判】鉄道DVD無断編集・販売による著作権侵害事件
<2010年7月2 日>
東京地裁 平成20年(ワ)第36380号
【事件内容】
原告旅行作家が撮影したビデオ映像を、被告側が無断で編集し、それをDVDにして販売等したことによる著作者人格権(同一性保持権、公表権、氏名表示権)および著作権(複製権)の侵害を理由とする損害賠償請求4950万円の支払いを原告旅行作家が被告に求めて争われた裁判
なお、問題のDVDのタイトルは「SL世界の車窓」といい、このDVDには、撮影者として原告旅行作家の氏名は表示されていない。
原告:旅行作家
(本件事件の対象となったビデオ映像を撮影)
被告:ダイソー
(原告が撮影したビデオ映像がDVD化されたものを販売していた
大手100円均一ショップ)
被告補助参加人:株式会社オスカ
(原告が撮影したビデオ映像を編集し、DVD化した
テレビ用映画フィルム配給会社)
【経緯】
事件の経緯はこちら
(長いため別ページにて掲載)
【主な争点】
- 1.原告旅行作家が撮影したビデオ映像の著作権が株式会社オスカに譲渡されたのかまたは、利用許諾があったのか
- 2.ダイソーによるDVDの販売の差止めについて
【判決】
1.原告旅行作家が撮影したビデオ映像の著作権が株式会社オスカに譲渡されたのかまたは、利用許諾があったのか
原告旅行作家は、株式会社オスカから、原告が撮影した映像を利用した放送番組の企画を検討している旨を伝えられたが、この企画自体がまだ明確に確定していたわけではなかったため、原告旅行作家がこの企画のために撮影映像の説明書を作成することを了解していたとしても、利用許諾があったとまではいえない。
また、原告旅行作家は撮影した映像の内容を確認することなく、株式会社オスカが撮影映像のテープを保管することに同意し、原告からその返還を求めることがなかったとしても、そのことにより、原告が撮影映像の著作者としての権利を放棄するなど著作者としての権利行使の意思がなかったものと認めることはできない。
よって、原告は撮影した映像につき著作権を放棄したり、株式会社オスカに著作権を譲渡・利用許諾することを黙示的に合意していたとは認められないため、株式会社オスカが原告撮影映像をもとにDVDを作成することは著作権(複製権)の侵害と認められる。
また、このDVDはダイソーの店舗で販売する商品として企画・制作され、ダイソーの名義のみが表示されて販売されていることからダイソーにおいても原告旅行作家の著作権(複製権)を侵害していると認められる。
その他、原告旅行作家の同意を得ないでダイソーがDVDを販売することは公表権の侵害にあたり、ダイソーが販売するDVDに撮影者として原告旅行作家の氏名を表示せずに販売したことは氏名表示権の侵害にあたる。
原告旅行作家が撮影した映像を株式会社オスカが無断編集したことは同一性保持権の侵害にあたるとも認定。
原告旅行作家が撮影した映像の著作権は原告に帰属しており、何等の使用許諾もされていないと裁判所は判断。
2.ダイソーによるDVDの販売の差止めについて
ダイソーは、原告旅行作家からのDVD販売中止の通告に基づき、一度はそれに応じない旨の回答をしたもののその後、DVD販売を中止し、DVDの在庫品回収を行いこれらDVDが最終的にダイソーから株式会社オスカに返品されたことが認められる。
よって、今後もダイソーがDVDの販売を行うおそれがあるとは認められないためDVDの販売差止めを行う理由はない。
ダイソーには販売をするためのDVDを全て返品しているため、販売さし止めの必要はないと裁判所は判断。
【結論】
被告らの原告旅行作家に対する著作権侵害等による、原告旅行作家が被った損害額を約307万円であると裁判所は認定しこれをダイソーが原告旅行作家に対し支払うようにとの判決。
【個人的見解】
著作権の譲渡・利用許諾については、やはり確実に契約書などの書面を
交わすことが非常に重要であることを認識させられました。
本件を見る限り、著作権について黙示の許諾・譲渡というのが認められる可能性はかなり低いと考えられます。
販売のみを行う側にしても、最終的にはその販売を行ったことにつき権利侵害を問われてしまいますので、著作権の帰属につき疑問を感じる場合はきちんと調査を行うことが望ましいと、この事件により改めて思わされました。
藤枝知財法務事務所
代表:藤枝秀幸(弁理士・行政書士)
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2011年5月30日、2011年5月31日
「開発費不要をうたうIT企業の思惑」「新事業モデル支える二つの契約形態」取材協力等
・日経コンピュータ2011年4月28日号
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